定年退職後も働き続けるとかえって損をする場合もある

2020/07/14
定年退職後2~3ヵ月休むのはいいとしても、これまでにも紹介してきたように65歳までは公的年金を全額受け取ることができません。年齢にもよりますが、とりあえずは「特別支給の厚生老齢年金(厚生年金の報酬比例部分、基礎年金部分を除いた全額)」などで食いつないでいくしか方法がないのです。

65歳まで最大限の収入を得るためには「賃金」「雇用保険」そして「公的年金」の3つを上手に組み合わせることが大切です。この3つの収入で不足する場合は預貯金などを取り崩していくしか方法がありません。

やはり65歳以降の老後生活を豊かにするという意味でも定年退職から65歳までは「稼ぎ時」と考えて仕事を続けるほうがいいかもしれません。自営業者にはない特典がたくさんありますから、うまく活用することです。

もっとも、こうした特典が享受できるのもおそらく団塊の世代くらいまでかもしれません。それ以降の若い世代は、たとえば退職によって大きく賃金が減った場合、雇用保険で最大15%を補助してくれる「高年齢雇用継続給付金」「高年齢再就職給付金」といった特典は廃止になっているか、縮小されていくはずです。

民主党政権の年金制度改革への期待もありますが、財源などを考えると、年金はたくさんもらえても、そのぶん消費税などの税負担が増えるなど、どちらにしても政府を頼らない人生設計をするしかないかもしれません。

また、定年退職後に働く場合、現状ではどうしても退職前と同じレベルの収入を確保するのは難しいと覚悟すべきです。たとえば「所得税」や「住民税」「健康保険税」といった租税公課の支払いなども考えて働く必要があります。働きながらもらうことができる「在職老齢年金」も以前と違って一定金額に達すると減額されてしまいます。

働くとかえって損をするようなケースがしばしばあるかもしれません。定年退職後も働く場合は、こういったところをキチンとわきまえたうえで働くことが重要です。退職後に働く場合、あるいは働かなくても関わってくるものを簡単に列記しておきます。

・在職老齢年金…働きながらもらう年金のことですが、賃金との合計額が28万円(60歳~64歳、65歳以上は48万円)を超すと年金が減額されます。

・厚生年金…働けば70歳までは強制加入になります。事業主が半分を負担してくれるため、現在の厚生年金の本人負担の保険料率は7.852%。20万円の賃金なら1万5,704円の保険料が徴収されます。

・雇用保険…現在の保険料率は1.1%。20万円の賃金なら800円の自己負担になります。

・健康保険…加入している健保組合によって異なるため一概にはいえませんが、たとえば中小企業などが加盟している「政府管掌健康保険」の保険料率は次のとおりです。

・40歳以上65歳未満の人…9.39%(本人負担は4.695%)
・40歳未満の人…8.2%(本人負担は4.1%)

健康保険で納めなければならない保険料が年齢で分かれるのは介護保険料の支払い義務が40歳から生ずるためですが、注意したいのは会社の健康保険に入っていれば会社が保険料を半分負担してくれるために有利であること。その反面、収入が年金しかなくなってしまえば国民年金になるわけですが、こちらのほうが割安になる可能性もあります。このあたりの金額も、事前にきちんと確認しておくといいかもしれません。

また、退職直後の1年間は、現役時代の高い賃金を基に算出された保険料が請求されてくるので要注意。退職後1年間は、住民税や健康保険税などバカ高い金額が要求されるために、びっくりしてしまう人が多いようです。たとえば、国民健康保険に加入した人の場合は年間で最高額70万円(介護保険料含む)にも達します。自治体によって変わりますが、10回払いで納税しなければならないような形で請求書が来て毎月7万円の健康保険税を支払うことになり、びっくりしてしまうケースをよく聞きます。

いうなれば定年退職後の損得勘定をきちんと把握したうえで働くことが大切だということです。こういった定年前後の損得勘定は一度社会保険労務士などの専門家にアドバイスを受けてみるほうがいいかもしれません。特に企業年金などで豊かな年金が約束されている人は、ある程度計算してみてリタイアするのか、それとも継続して働き続けるのかを決めたほうがいいでしょう。